システム思考についてどうすればいいの?システム思考っていったい何なの?今の私の考え方はどうなの??

🚀 システム思考の入門ガイド:全体とつながりを見る力
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システム思考は、目の前の問題を部分的に見るのではなく、物事を「ひとつのまとまり(システム)」として捉え、複雑な問題の根本的な解決を目指す考え方です。
🧐 システム思考とは何か?氷山モデルで自己理解を深める
システム思考とは、物事をバラバラの部分として捉えるのではなく、お互いに影響し合っている「一つのまとまり(システム)」として見る考え方です。
💡 定義:システムと思考
- システム(System):
- 定義: ある目的に向かって、複数の要素(部品)が結びつき、お互いに影響し合いながら機能しているまとまりのこと。
- 例: 会社、家族、エコシステム(生態系)、あなたの体など、身の回りにある多くのものがシステムです。
- システム思考(Systems Thinking):
- 定義: 目の前の問題や出来事を、それを取り巻くシステム全体のつながり(相互作用)や時間的な変化に注目して考える方法論。
- 「AをしたらBになった」という単純な原因と結果(直線的な考え方)ではなく、「AがBに影響し、そのBがまたAに影響を返す(循環的な考え方)」という風に、全体の構造を見て根本的な解決を目指します。
あなたが「どうすればいいか分からない」と悩む時、それは問題の一部しか見えていない可能性があります。システム思考では、問題の原因を海の上の氷山に例えて考えます。
🧊システム思考の視点:氷山モデル
氷山の部分出来事EVENTSは 私たちが見ているものです。
水面上 (10%):
出来事・現象(Event) 「今、何が起こっているか?」(例:悩んでいる、失敗した)
氷山の頂上で目に見える問題。
水面下 (90%):
行動パターン・傾向(Pattern) 「それは繰り返されていないか?」「時間とともにどう変化しているか?」(例:いつも同じ時期に悩む、悩みの種類が変わらない)
水面直下で出来事の背後にある傾向。
システム構造(Structure): 「そのパターンを生み出している仕組みや要素間のつながりは何か?」(例:仕事の進め方、人間関係、時間の使い方)
氷山の本体:問題の構造(循環)。
メンタルモデル(Mental Model): 「構造の土台にある人々の考え方、信念、思い込みは何か?」(例:完璧でなければならない、自分は能力がない、など、あなた自身の無意識の前提)
氷山の根っこ:最も深い原因。
💡氷山モデルのポイント
目の前に見える「出来事」の課題、問題を対処しても、水面下の見えない「構造」や「メンタルモデル」を深く潜水、根本原因(真因)解決をしない限り、問題は形を変えてまた現れます。根本的な解決には、水面下の構造に働きかける必要があります。
📚システム思考の歴史:全体を見る考え方の進化
システム思考は、物事をバラバラに分けて考える従来の科学(還元主義:複雑な事象を、より基本的で少ない要素や原理に分解して説明しようとする考え方)の限界から生まれました。
- 1940年代:全体を見る視点の誕生
- 一般システム理論(提唱者:L.フォン・ベルタランフィなど)
- 考え方:「どんなシステムにも共通の法則がある」と提唱。
- キーワード:「全体は部分の総和以上である」(部品を集めただけでは、システム全体の命や機能は生まれない)。
- サイバネティクス(提唱者:N.ウィーナーなど)
- 考え方:生物や機械が、どのように情報をやり取りし、目標に向かって自分を制御しているかを探求。
- キーワード:フィードバック(システムの行動の結果が、次の行動に影響を与える循環の仕組み)。
- 1950年代〜:経営と社会への応用
- システム・ダイナミクス(生みの親:ジェイ・フォレスター)
- 考え方:フィードバックの考え方を、経営や都市問題などの複雑な社会システムに応用。
- ツール:シミュレーション(未来の動きを予測すること)で、長期的な影響を分析。
- 1990年代:ビジネスへの普及
- 学習する組織(普及者:ピーター・センゲ)
- 考え方:フォレスターの手法を元に、組織が学び成長していくための方法論として提唱。
- ツール:因果ループ図(後述します。)というシンプルな図を使って、複雑なつながりを「見える化」する方法を広く普及させました。
🛠️ システム思考の使い方:因果ループ図で構造を見る
システム思考を実践するための最も基本的なツールが「因果ループ図」です。
2つの基本的な因果ループの構造は以下です。
「S」(Same,同)、「O」(Opposite、逆、反対方向)
- ツール:因果ループ図 (Causal Loop Diagram: CLD)
要素同士が、どのように影響し合っているかを矢印で結び、システムの「循環(ループ)」を可視化します。
| 記号 | 意味 | 解説 |
| 要素 | 変化するもの(変数) | 例: 勉強時間、集中力、仕事の効率 |
| 矢印 | 影響の方向 | 「Xが増える(減る)と、Yが増える(減る)」という影響を示す。 |
| 符号 | 影響の種類 | 「+」(促進): 同じ方向(増える→増える、減る→減る)の変化。 |
| 「ー」(抑制): 逆の方向(増える→減る、減る→増える)の変化。 |
- ループの種類:システムを動かす2つの力
因果ループ図には、システムを動かす2つの基本的な「仕組み」があります。
| ループの種類 | 記号 | 仕組み | 例 |
| 自己強化型ループ | R(Reinforcing) | 「ますます良くなる」「どんどん悪くなる」というように加速的に物事が進展していくパターンを生むループ構造(成長や衰退を加速させる力) | 例:「勉強」は、「勉強量を増やす」や「勉強量が増加する」など
勉強量を増やすと理解度が上がり、さらに学習意欲も上がり好循環が生まれる。 「勉強」は、「勉強量がへる」や「勉強量が減らされる」など |
| バランス型ループ | B(Balancing) | バランス型ループは、システムをある水準にとどめよう、収束しようとする現状維持力が働くループ構造。 | 例:勉強時間(量)が増えると、テストの点数が上がると、逆に親が口を出してこなくなり、勉強時間が今度は減って、テストの点数も下がると今度は親が口を出してきて、勉強時間が増えてと、均衡が保たれ変化を抑え込み、元の状態や目標に戻そうとするループ。 |
📖 事例で自己学習 e-learning:能力開発のジレンマを解く
因果ループ図で分析し、どこに手を打てばいいのかを見つけます。
【事例】忙しいのに成長できないジレンマ
あなたは「新しいスキルを身につけて成長したい」と思っていますが、「忙しくて勉強時間が取れない」状況が続いています。
❌ 直感的な対処(効果が低い)
- 「とにかく頑張って勉強時間を捻出しよう!」
- 結果:疲労がたまり、集中力が落ちて成果が出ず、すぐに挫折します。
✅ システム思考による分析(構造を見る)
あなたには、いま2つのループが存在し、「忙しさ」が「成長の好循環となる」を打ち消しています。
| ループ名 | ||
| R1: 成長の好循環 | スキルアップをすることにより仕事は順調にすすみ、忙しさが減り、さらに勉強できる「好循環」が生まれる。 | |
| B1: 忙しさの罠 | 忙しさが疲労を生み、集中力が低下。すると仕事の効率が下がり、さらに忙しくなるという「悪循環」が、R1の好循環の発生を抑え込んでいる。 |
🎯 レバレッジ・ポイント(効果的な介入点)を見つける
システム全体を変えるための最も効果的にかかわる場所を探します。
- 最も深い根っこへの介入:メンタルモデルを変える
- 介入点: 「仕事は全て自分で完璧にやらなければならない」という思い込み(メンタルモデル)を、「他者に頼ることはチームの力を高める」という考え方に変えます。
- 効果: ストレスを生む根源が解消され、忙しさの罠(B1)の力が弱まります。
- 弱い好循環を強くする:最初の行動を絞り込む
- 介入点: 勉強する内容を、「仕事のムダを減らすスキルアップと大きく広げないで例:自動化、簡素化)に限定します。
- 効果: 短期的に「仕事の効率」を上げ、「忙しさ」を少しでも減らすことで、成長の好循環(R1)が回り出すきっかけを作り出します。
🌟 あなたへのアドバイス
時間を「作る」ために頑張るのではなく、時間を奪っている「忙しさの構造」と、それを解決する「あなたの考え方」を変えることにしようと考え実行する。そしてやったかなと日々自己チェックまたは友達にチェックしてもらう。
このシステム思考のレンズを通して、あなたの抱える問題を「構造」として捉え直し、根本的な解決につながる「レバレッジ・ポイント」を見つけていきましょう。レバレッジは「てこ」の意味で、小さな力で大きなものを動かすということです。シーソーですね。
まずは、あなたの今の悩みを構成する要素をいくつかピックアップし、それらが「+」と「ー」のどちらで影響し合っているかを描いてください。

参考:システム思考の起源、主要な思想家と貢献者、そして学際的発展の歴史に関する記述。
参考図書:フィールドブック 学習する組織「5つの能力」 日経新聞出版社2003.9.18ピーター・センゲ他
参考図書:入門システム思考 講談社現代新書2007.06.20 枝廣淳子、内藤耕


