躊躇していても何も変わらない。やっているつもりでも、IoTやデジタル変革などへの取り組みは「終わりのない旅(ジャーニー)」です。
Introduction
Table of Contents
現状のメンテナンス活動の問題点
設備の老朽、劣化の進行に伴い近年メンテナンスに対する要求が高まっています。
現状のメンテナンス技術、技能は高いレベルに保たれていますか。
例: 誤操作・誤判断に起因する事故の比重が減り、設備の維持管理の不良による事故の比重が増える傾向となっている
例:設備の維持管理不良による事故は、近年、急速な増加傾向にある
例:化学業界全体における従業員数は、減少傾向が継続しており、直近50年で約50万人から35万人へと30%減少している。
例:2000年代の事故再発期は、事故が多発した70年代の若手社員が引退の時期を迎える中、過去の採用抑制によりミドル層の不足が課題として顕在化した時期と重なる
例:ランダム抽出した石油化学業30社の事業所について、主たる製品の製造プロセスに注目すると、
バッチプロセスの事業所よりも、連続プロセスを行う事業所の事故発生率が高い水準にある。
例:同一事業所での事故発生頻度、10年間で漏洩以外及び火災等を伴う漏洩事故を起こす事業所は11.7%、事故を繰り返す事業所は3.7%。全漏洩事故を含めても事故を起こす割合は20%程度だが、漏洩事故を繰り返す割合は高い。
例:人的被害を伴う高圧ガス事故は全体の2割弱で発生。業種別にみると、死者、重傷者数、軽傷者ともに、一般化学、石油化学、石油精製の順に人的被害が大きい。
近年、プラントの事故件数が増える傾向は経験者の退職、技能伝承の弱体、作業者へのスキルアップへの取り組みが進んでいないことがあります。
さらに、メンテナンスは科学的合理性をもち、従来から実施されていたとは、 かならずしもいえない。
問題解決は, 単にメンテナンスへ資源を投入するということではありません。
①設備の経年変化、損傷による部分、部位を定期メンテナンスによるデーターをデーター化(SQL)する活用する。
②解析実施に莫大な作業量を消化するために人工知能(AI)やディープラーニング(深層学習)、DX(デジタルトランスフォーメーション)(AI,DL,DX=機械学習)が必要
合理的でユスト効果の高いメンテナンスを可能にするための方法を考える必要があります。
プラントの直面している課題の構造
画像をクリックしてください。
メンテナンスの問題点
- その1:メンテナンスの問題点は, メンテナンスが対象設備、 業界などごとに扱われていることです。俗に言われる縦割りで進められ、関連関係団体のヨコ軸が通っていません。横軸をとおそうと意識はあるが組織・体制がついてこない。
そのため、結果、各プラント系工場,加工組立系の工場, 社会インフラ分野ごとに議論がされている。
「ウチはヨソとは違う, 機械は1台1台に個性があるから, 同一化して考えることは無理だ、経営体質も違う」という議論があります。
忘れていけないことは、『工学は,個々に違うものなかに共通項を見出し, その発見から一般的な法則やルールに基づく知識体系化を図り,体系化された知識を, 個別の問題に適用することで科学的合理性ある問題解決をすることです。つまり 普遍化されたアプローチをすることが現状のメンテナンス活動の問題解決の基本です。
- その2:「ウチはヨソとは違う、同じアプローチをとれる経営環境にない。会社が違えばメンテナンス予算も人材も違う。
背景が種々雑多でも、そのままの知識体系化から科学的合理性ある問題解決に取り組む、つまり 普遍化されたアプローチ体系化を構築することです。
その先に期待されるメンテナンスの合理化と, その結果として現れる効率化に蓋をしない。
まず重要な点は、社内のメンテナンスにかかわる保全要員が、個々の問題のどこが共通点なのか, 問題の発掘のために時間を割き、メンテナンス技術を発展させようとするアドホック委員会を立ち上げること。
- その3:メンテナンスに関して, 本来メンテナンスはライフサイクルにかかわる問題であることに多くの人が気づいているが、またまた口癖がでる、「ウチはヨソとは違う、同じアプローチをとれる環境にない。会社が違えばメンテナンス予算も人材も背景も違う。」と、ここが解決されていません。
では、どうすればいいの?
メンテナンス計画
設備の経年変化、損傷による部分、部位を定期メンテナンスによるデーターをデーター化(SQL)する活用すること、また損傷、劣化が引き起こす故障の予測技術を確立する必要があります。
設備の構造、機能の解析が必要でも不可欠な設計情報は設計部門からメンテナンス部門へ渡されてないことが一般的です。一方, 設計段階で決めたメンテナンスの方法は, 設計、保全、保全専門会社とのコニュニケーションを欠き、かならずしも現場で適切に運用されてはいない。
したがって, 実際の運転条件,使用環境で生じる種々の不具合に関する経験を3者関連部門でインプットするメンテナンス方法の見直しが必要です。
メーカが推奨するメンテナンス方法を改善する仕組みをユーザが開発しないで, メンテナンスを実施している場合があります。
設備のライフサイクルを通じた一貫したメンテナンス管理をしていないため, メンテナンスの効率化が上がらないことがあります。
ここまでに書いてきたメンテナンスに関する問題は、再度「プラントが直面している課題」(下に再掲)をご覧になってください。短期間で解決できるものではありませんが、ほっておかずに、次のような取組みをして問題解決をすることが重要です。
再掲画像です、クリックしてください。
社会は, サイクリック型社会に向かっています。大量生産、大量消費、大量廃棄のモノ中心のライフサイクルから使用価値に立脚したライフサイクルへの移行中です。このような流れの中で形成された循環型社会のメンテナンスの重要性を認識する活動が必要です。
メンテナンス概念の再確立
メンテナンス技術体系の確立は、まだ 「メンテナンスは修理」または「壊れたものを直す技術」 と考えている人がいます。メンテナンス概念をもう一度、整理して確立することが必要です。
メンテナンスは、使いながら改善、改良を続け, モノをより有効に活用することがメンテナンスであるという概念の再確認です。
生産設備に関しては, 運用段階での継続的な改善、改良が, 稼動率の向上と故障低域に大きな効果を生むことはどこの事業体でも TPMの例から確認されています。 耐久消費財に関しても, 生活消費財に関してもレンタル, リースなどの組み合わせ, サブスクリプション、アップグレードを含むメンテナンス·サービスを図り,コストフィットと環境効率の向上が実現されています。
AI,ITを活用したメンテナンス管理
継続的な改善·改良を実施してモノを活用していくためには、ライフサイクルを通じたメンテナンスの管理が必要になります。そのためには,製品や設備に関する設計, 製造, 使用データを統合的に管理し、ライフサイクルの各段階で活用できるようにする必要があります。
- コンピュータによる支援.製品開発のコンピュータ利用は すでに超急速に進み, デジタルプロセスや仮想生産、DXといったキーワードがさかんに使われ、さらにAI活用に勢いがでてきています。従来では考えられなかったようなAI設計、3D設計、生産プリンター、バーチャル空間など、その活用が盛んになっています。
- 製品開発プロセスにおいては, 品質を落とすことなく、品質を向上させながら開発リードタイムの短縮, 開発コスト削減といった要求を達成する。そのために,かつて下流で摺合せが行われていたプロセス評価を開発工程の上流で、設計への負荷増大を防ぐためにコンピュータ・デジタルAI支援が必要です。
- メンテナンスにおいても, 設備のライフサイクルを通じたデータ管理や解析実施に莫大な作業量を消化するために人工知能(AI)やディープラーニング(深層学習)、DX(デジタルトランスフォーメーション)(AI,DL,DX=機械学習)が必要となりますITの積極活用は最重要。
劣化·故障解析の目的
劣化·故障解析の目的は, 設備の使用にともなって生じる劣化の予測と、それによって引き起こされる故障の予測をすることです。
劣化·故障解析は、設備開発段階での信頼性 保全性設計をする場合、運用段階で基本メンテナンス計画のために実施する場合, 運用段階で発生した種々の不具合の診断の場合など, 多くの場面で必要とされます。(設備の経年変化、損傷による部分、部位を定期メンテナンスによるデーターをデーター化(SQL)する活用すること、また損傷、劣化が引き起こす故障の予測技術を確立する必要があります。
)
劣化は物理的·化学的なモノ・アイテムの属性の変化です。一方、故障はアイテムに要求された機能が達成できなくなることです。
設備の運用段階では、運転条件,環境条件に応じてアイテムはストレスを受け, それによってアイテムに種々の劣化メカニズムが起き、材質, 形状, 表面性状等の属性変化が生じます。
アイテムに加わるストレスは設備構造や、その挙動,環境条件などに依存し,またそれらによってアイテムに生じる劣化はアイテムの属性に依存します。したがって, 劣化解析では、劣化要因を的確に把握することが重要となります。
劣化に続いて故障解析について、
- 故障解析においては, 劣化によるアイテムの属性変化がそのアイテムの機能のどこに、どのような変化を生じさせるのか, さらにはそれが他のアイテムにどのように影響していくのかを解析することです。
- 劣化故障解析は信頼性,安全性解析,メンテナンス計画等のさまざまな分野において必要とされる基本的な解析です。よく知られているのは、 FMEA (Failure Mode and Effects Analysis),FTA (Fault Tree Analysis)です。
ITの世界に依存する、製造業の世界でもIoT活用を含めたAI,DL,DX
ITの世界に依存する、製造業の世界でもIoT活用を含めたAI,DL,DXへの関心が高まっています。
企業の多くは「具体的な成果を得ることが難しい」や「全体最適につながる基盤作りがうまくいかない」というような声が多く、順調に進んでいるとはいえない状況が生まれています。
基本的には、IOTデーターを集約するIoT基盤作りを進め、集約したデータを活用、現場にフィードバックする仕組みを作り、製造ラインに反映、生産性向上をすることです。
IoTシステムでは、現場に近いところでデータを収集したり、さまざまなロジックを実行したりする基盤と、現場から集めた膨大なデーターを高速に処理する高性能な基盤を柔軟に連携させることが必要十分条件です。マイクロソフトは2016年ごろからデータ領域から情報を処理する「エッジ層」、クラウドで大容量データを処理する「クラウド層」、さらに両者を中継してデータを整流化する役目を担う「フォグ層」の3つの層を構築、それぞれの要件を吸収するという考えをベースにしています。すなわちマイクロソフトに限らず、「IoTを取り巻く環境では、3つの層の考え方に合理性が不可欠ということです。
IoTやデジタル変革などへの取り組みは「終わりのない旅(ジャーニー)」です。
===================================
Risk-Based Maintenance (RBM)
Risk-Based Inspection (RBI)
===================================