#1 Risk Based Inspection & Risk Based Maintenance

RBI/RBM

メンテナンス活動の問題点

設備の老朽、劣化の進行に伴い近年メンテナンスに対する要求が高まっています。現状のメンテナンス技術、技能は高いレベルに保たれていますか。
   発電設備の事故の原因は「保守の不良」 が約40%, 損害額は約40%を占めます。
また近年,プラントの事故が増えるのは経験者の退職、技能伝承の弱体、作業者のスキルの低下が進んでいることがあります。
さらに、メンテナンスが科学的合理性をもち従来から実施されていたとは、かならずしもいえない。これらの問題解決をするためには, 単にメンテナンスへ資源を投入するということではありません。
合理的でユスト効果の高いメンテナンスを可能にするための方法を考える必要があります。

メンテナンスの問題点の第1点は, メンテナンスが業界ごと、会社独自ごとに扱われていることです。俗に言われる縦割りで、ヨコ軸が通っていません。
そのため、各プラント系工場,加工組立系の工場, 社会インフラ分野ごとに議論される傾向があります。
  「ウチはヨソとは違う, 機械は1台1台個性があるから, 同一化して考えることは無理」という考があります。忘れていけないことは、『工学は,個々に違うものなかから共通項を見出し, そこから一般的な法則やルールに基づく知識の体系化を図り,体系化された知識を, 個別の問題に適用する、そして科学的な合理性のある問題解決をすることです。つまり 普遍化されたアプローチをすることが今のメンテナンス活動の問題解決の基本です。

そうはいっても「ウチはヨソとは違う、同じアプローチをとれる環境にない。会社が違えばメンテナンスの予算も人材も違う。いろいろな背景はありますが、このままで体系化は進まない。先に期待されるメンテナンスの合理化と, その結果の効率化が閉ざされてしまうことがあります。

重要な点は、メンテナンスにかかわる保全要員が個々の問題のどこが共通点なのか, 同じ問題の発掘のために時間を割き、メンテナンス技術を発展させようとすることができる環境文化を創ることです。

メンテナンスに関するもう1つの問題点は, 本来メンテナンスはライフサイクルにかかわる問題であることに気づいていると思いますが、思うだけで、「ウチはヨソとは違う、同じアプローチをとれる環境にない。会社が違えばメンテナンス予算も人材も背景も違う。」ここが解決されていません。

メンテナンス計画

 設備の経年変化、損傷による各部分、部位を定期メンテナンスによりデーター化として活用すること、また損傷、劣化が引き起こす故障の予測技術を確立する必要があります。このためには設備の構造、機能の解析が必要で設計情報が不可欠であるが, 多くの場合このような情報は設計からメンテナンス部門へ渡されない。一方, 設計段階で決めたメンテナンスの方法は, かならずしも現場で適切に運用されていません。したがって, 実際の運転条件,使用環境で生じる種々の不具合に関する経験をインプットしたメンテナンス方法の見直しが必要です。最終的には人ですが、データー収集はITに頼ること。そのIT内容はブラックボックスではなく現場はその内容を理解していること。アポロ13号で帰還時に使われた電卓です。

アポロ13号は、1970年4月11日に打ち上げられ、月面着陸を目指していました。しかし、2日後に酸素タンクが爆発し、月面着陸は中止されました。その後、宇宙船の乗組員は、地球に帰還するための方法を模索しました。彼らは、宇宙船の電力を節約するために、地球との通信を断ちました。そして、彼らは手動で宇宙船を制御し、地球に帰還することができました。アポロ13号の帰還時のストーリーについては、映画『アポロ13』をご覧ください。

 

メンテナンス概念の再確立に移る前に

リスクを肝心要としたメンテナンス、点検が必要です。リスクベースドメンテナンス Risk-Based Maintenance (RBM)及びリスクベースドインスペクション Risk-Based Inspection (RBI)があります。
Risk-Based Maintenance (RBM)及び Risk-Based Inspection (RBI)の基準、規格について:

Risk-Based Maintenance (RBM)とは、設備の老朽化や異常、故障のリスクを評価し、その結果に基づいてメンテナンスや検査の計画を立てる手法・方法です。リスクベースドインスペクション Risk-Based Inspection (RBI)とは、RBMの一種で、検査対象の設備について、故障が起こったときの影響と故障の発生確率からリスクを算出し、検査の頻度や方法を決める。これらの手法は、設備の信頼性を向上させるとともに、メンテナンスや検査のコストを最適化することができます。

RBMやRBIを実施するには、適切な基準や規格が必要です。日本はJISやJSMなどが関連する基準や規格を策定、例は、JIS Z 8115は信頼性, 保全性と安全性の分野に用いるディペンダビリティに関する主な用語と定義について規定、JSM 001は原子力発電所の保全活動を適正化するために必要な基本的事項とその解説(JSM MSP 001)、原子力発電所の保全活動とありますが、「本書は保全技術者、保全研究者あるいは保全の専門家を志す若手の技術者、研究者の入門書です。また、海外では、欧米を中心にさまざまな産業分野でRBMやRBIに関する規格が設定されています。API 580は「リスクベースドインスペクション」、API 581は「リスクベースドインスペクション技術ガイドライン」などは参考になります。そして、これらの基準や規格は、設備の劣化メカニズムや故障プロセスを分析し、リスク評価の方法や計算式を提供しています。また、各企業が蓄積したノウハウや点検データなども活用されています。さらに、IoT技術の発展により、設備の状態を詳細にセンシングし、インターネットを通じて膨大なデータを収集・分析することで、より精度の高いリスク評価が可能になっています。このように、RBMやRBIは、基準や規格に基づいて客観的かつ合理的にメンテナンスや検査の計画を立てることができる有効な手法です。設備の安定稼働とコスト競争力の向上を目指す企業にとって、今後ますます重要になると考えられます。

メンテナンス概念の確立#2に続きます。

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