Many unseen spots are invisible even when they are close, meaning that the grass is always greener on the other side.死角の多くはたとえ近くても見えない状態、つまり「灯台下暗し」

死角とは

「死角」は、物理的に周囲の障害物や使用する道具の構造により見ることができない範囲のことです。たとえば、次の漫画を見て、もし私が動くとここに死角ができるぞ、次にここからこう動くとここが死角になると日常の家庭生活、会社生活において執務部屋の周り角、通路、道路の曲がり角や、自動車、フォークリフトの運転席から見ることができない範囲、それらはまさに身近な死角です。

まずは身近な自動車を例に、死角がどのようにして生じるか?「死角」は安全を妨げる要因となることが少なくありません。

 

ちょっと演習してみてください。

 

死角は「灯台下暗し」

死角の多くはたとえ近くても見えない状態、つまり「灯台下暗し」といえます。死角によるリスクを検討するときはまず身の回り、自分に近いところにも注目することが大切です。

その身近な例は、御自身の衣服や装備の状態です。現場に行くときに必要な保護具や装備を付け忘れて現場に行ってしまうエラーは珍しくありません。また、服の一部がはみ出たまま機械で作業している。すると巻き込まれのリスクがあります。これには第三者による相互チェック、客観的な確認が必要で有効です。

しかし、自動化や省人化が進むにつれ、こうしたエラーに気づき指摘する第三者が周囲にいない状況が増える傾向にあります。カメラが捉えた現場をAIが解析し、作業者の装備や服装に不足・不備がないかを自動検知、音声で伝えるシステムも使えます。

AIと聞くと、どこか殺伐(さつばつ)とした印象があるかもしれません。が、自動車の分野では、運転アシストや自動運転など身近な技術は進歩しています。センシングやAIの技術が、灯台の下、つまり死角を照らし、わたしたちの安全を守る頼もしい存在として、製造現場のあらゆる場面で有効活用される安心できます、チームでどんどん提案し実現することですね。いいことを見て、聞いて、身の回りになければチーム提案することです。

 

自動車における死角

自動車運転時の死角は周囲の障害物だけでなく、自動車の構造によっても生じます。安全を確保するためには、乗っている自動車の構造によってどのような死角が生じるかを認識しておくことが大切です。構造上の死角と要因について、一般的な乗用車を例に説明します。

・車体の周囲

車高が高いほど車体周囲の死角が増えます。コンパクトカーやミニバン、SUVは、セダンやステーションワゴンなどに比べ車高が高いため、車体周りの死角が多くなる傾向があります。また、SUVはボンネットが長く、車体前方にも大きな死角ができます。

・フロントピラー、リアピラー(柱)

フロントガラスの両サイドにあるピラーは、右左折時に死角を作ります。セダンやステーションワゴンは、ルーフ(天井)が低い分ピラーの傾斜角度が急なため、死角ができる範囲が広くなります。また、ステーションワゴンは、車体後方のピラーの数が多い分、後方の死角も多くなります。

こうした構造による死角の違いは、レンタカーやカーシェアなど、いつもと違う自動車に乗ったとき、違和感、不安を感じる大きな原因です。安全を確保するうえで死角を意識し、姿勢を変えるなどして視界を確保しながら、ピラーの向こうや後方に人影や障害物がないかを確認することが重要です。

自動車の車種が異なるだけでも注意すべき死角が異なります。それが、製造現場のように複雑かつ動的な場所となると、さらに多くの死角が存在します。

製造現場での死角と対策

製造現場は、多種多様な機械・設備・動線で構成され、常に人やモノが動いている場所です、さまざまな死角と向き合うことになります。そのため、死角によるリスクの把握と注意は、安全確保するために大変重要です。

工場施設内で運用される自動車、フォークリフトでの死角の例を挙げます。

フォークリフトでの死角

製造現場において材料・部材・部品・ワーク・完成品などの運搬に欠かせないのが、フォークリフトです。倉庫などでフォークリフトを使う場所では、人が歩行したり、在庫管理やピッキングなどの作業を行ったりするため人への注意が不可欠です。フォークリフトの動線と人の動線が交わる際、死角となる角にミラーを付けたり、ボイスメッセージ、フォークリフトの往来時にランプや音で知らせたりといった対策が代表的です。

ただし、フォークリフトにも自動車と同様に構造上の死角があるため、運転時には注意が必要です。フロアで作業する人もそのような運転者側の理解が必要です。フォークリフトでは、前方の左右にある2本のマストの向こうが死角になります。つまり、近くに人がいてもマストの位置に重なると見ることができません。
そのため、運転者はどんなに急いでいても、安全なスピードで走行し、曲がり角などでは運転席で前傾姿勢を取りながら、マストの向こう側の視界を確保するなどの安全確認が重要となります。また、動線が交わる場所や曲がり角・大きな荷物・倉庫の柱の近くなど死角になりやすい場所では、運転者はもちろん歩行者にも注意を促すように、視認性の高い位置に目印を付けるといった対策が有効です。

リーチ式フォークリフト特有の死角と注意点

小型・小径で、狭い場所でも小回りが利くリーチ式フォークリフトもカウンター式フォークリフトと同様に死角への注意が必要です。また、リーチ式では特有の構造によるヒヤリハットや事故にも注意が必要です。
多くの場合、リーチ式は、進行方向を決める後部の小径タイヤが車体に隠れて見えにくくなっています。タイヤの方向が真っ直ぐだと思い込み、慌てて発進してしまうと、思わぬ方向に進んでしまい大変危険です。

どれだけ急いでいても急発進は避け、タイヤの向きやハンドルの状態を確認し、ゆっくり発進する。また、リーチ式フォークリフトの使用後は、次に乗る人が安全に発進できるよう、タイヤの向きを直して停車するルールを設けて必ず守るなど、安全確保を徹底すること。

動線や機械装置の周りでの死角と対策

・台車やハンドリフトでの死角

製造現場で、人が台車やハンドリフトを使って重量物を搬送しているときに曲がり角などの死角での出合い頭の衝突を避けること。
死角のリスク以外にも運搬者は荷物に視線や気を取られることが多いため、人の存在に気づかないことがあります。治工具を置いた棚にぶつかった場合も、重い治工具の落下により他の人が怪我をすることがあります。

対策として代表的なのが、ドーム状のミラーの設置です。しかし、運搬者がハンドリフトの荷物にばかり気を取られてしまう、トラブル発生時に焦って電話で話しこんで資料を見たりしながら歩いてしまう、現場で来訪者を案内しながら会話に夢中になってしまうといった状況で、人は死角やミラーの存在を忘れてしまいことがあり、ミラーなどがうまく機能しないことへの対策はボイスメッセージを聞くためのイヤホンをつけること。
周知や注意を徹底しても、ヒューマンエラーを完全に撲滅することは簡単ではありません。視覚での注意と認知がうまく浸透しない場合は、音や光を使って侵入や存在を知らせるといった対策が必要になります。しかし、たとえば台車やハンドリフトに鈴またはブザーなどをつけて動くたびに音が鳴るといった対策は、職場環境の快適さを損なうため、次に紹介するようなセンシング技術の活用が、最も有効な手段といえます。

・自動搬送や機械・装置、ロボット運用での死角と対策

機械・装置などを①フェンスで人と設備の分離、②AGV(無人搬送車:Automatic Guided Vehicle)と動線を分けることは基本的な対策です。③ヒヤリハットや事故の防止には、基本対策にプラスした死角対策が必要です。

機械は人と違ってドーム状のミラーを確認して臨機応変に対応できません。しかし、セーフティレーザスキャナやセーフティライトカーテンなど、センシング技術を活用すると、死角を含む必要なポイントやエリアで、必要なときだけ人に対して安全メッセージ(警告)、機械・装置側の動作を自動的にロックダウン(停止)させることができます。「機械安全」といいます。

たとえば、人や障害物がエリア内に存在することをセンシングするコンパクトなセーフティレーザスキャナはAGVに搭載され、人にとって死角となる場所であっても、進行方向の人や障害物の存在を感知して起動を抑止したり走行を停止したりするなど、自動搬送の安全性向上に広く活用されています。
また、装置やロボットアームの周りにセーフティ機器を設置することにより、死角になりやすい場所でメンテナンス作業をしている人を検知して別の人が誤ってロボットを始動できないようにしたり、人の侵入を感知すると機械・装置・ロボットなどを停止させたりすることもできます。

 

人と一緒に働く協働ロボットの多くは、視覚(カメラの映像)をピッキングなどの作業に使用します。安全確保に触覚(センサ)を使うことで機械側の死角そのものを排除します。アームが人や障害物にわずかでも接触すると、それを感知してすぐに動作を止めます。機械そのものの安全性を高めることも対策として有効です。

ライン・トレースなど指定した動線上を進むだけの無人搬送に留まらず、AI活用の自律的な無人搬送もあります。たとえば、施設内の死角ができやすい曲がり角などに取り付けた、第三者視点のカメラで得た映像からAIが人の動きを感知して分析・予測。その結果を無人搬送機にフィードバックして制御することで、人や障害物を柔軟に避けながら進むことができる、インテリジェントな搬送システムも進んでいます。

でも現場の死角は「灯台下暗し」を忘れないでください。

ビジネスにおける「死角」(ブラインドスポット)とは

ビジネスにおける「死角」(ブラインドスポット)とは、企業や経営者が見落としている重要な要素や、認識していないリスク・機会のことを指します。特に変化の激しい現代ビジネスにおいて、この死角が企業の競争力や存続に大きな影響を与えます。

最近のビジネスにおける死角の傾向について、考えてみましょう。


 

最近のビジネスにおける「死角」の傾向

1. 組織の内部構造に潜む死角

 

企業が成長し、組織が複雑になるにつれて、意図しない見落としや非効率が生じやすくなります。

  • 戦略的な学習の欠如: 成功体験や過去の類似事例に頼りすぎる。結果、現在の競争環境の複雑さや不確実性を単純化しすぎてしまう傾向があり、また、失敗を公にし、そこから学ぶ文化がないと、同じ過ちが繰り返される原因となる、これは構造的な死角となってしまいます。
  • 組織のサイロ化と情報伝達の遅延: 部門間での連携が不足し(サイロ化、蛸壺化)、重要な情報が組織内で滞留したり、トップダウン・ボトムアップの情報伝達のスピードが遅くなる、死角となります。市場の変化を現場が正確に捉えていても、経営層がタイムリーに理解できない状態です。

 

2. デジタル化・スピード重視が生む新たな死角

 

デジタル変革(DX)や、市場の要求に応じたスピードを重視する動きが、新たなリスクを生んでいます。

  • ソフトウェア開発における品質の死角: 開発スピードを上げたり、内製化(自社で開発すること)を進めたりするとき、ソフトウェアの品質向上に不可欠なテストや検証業務がおろそかになりがちです。これにより、リリース後に重大な不具合が発覚し、サイバー攻撃を受ける、そして顧客からの信頼を失うといったリスクが死角として浮上し続けています。
  • レガシーシステムと技術的負債: 新しい技術やサービスに注目する一方で、企業を支える古い基幹システム(レガシーシステム)の維持管理や更新が後回しになっています。これが今、システム障害やセキュリティリスク、新しいビジネスへの対応遅れといった大きな負債(死角)となっています。

 

3. 顧客・市場認識における死角

 

自社中心の視点にとらわれ、市場や顧客の真のニーズを見誤ること。重大な死角です。

  • 「ジョブ・トゥ・ビー・ダン」(JTBD)の見落とし: 顧客が「何を達成したいか」という根本的なニーズ(JTBD)ではなく、自社の製品やサービスにばかり焦点を当ててしまう自己中心であることで、顧客が解決策として選ぶ異業種や代替手段の登場を見逃してしまう死角です。
  • 無意識のバイアスによる多様性の欠如: 意思決定層や商品開発チームに多様性(ジェンダー、国籍、経験など)が欠けている場合、特定の顧客層や社会的な価値観の変化に対する感度が鈍くなります。その結果、社会の大きな潮流(例:SDGs、ダイバーシティ&インクルージョンへの関心)を見誤り、事業機会を逃したり、炎上リスクを招いたりする死角が生まれる。
  • これらの死角を解消するには、組織が内部反省を全員で深め、外部環境の変化を多角的に捉えるための仕組みを学ぶ、失敗から学ぶ文化の醸成を行動すること、とにかく行動すること。

「組織のサイロ化、蛸壺化」のシステム思考による分析

 

サイロ化とは、組織内の各部門(例:営業、開発、マーケティング)が、まるで独立した「孤立した筒(サイロ)」のように機能し、情報の共有や協力が滞ってしまう状態を指します。

システム思考では、この状態は「コミュニケーション不足」ではなく、悪循環を生む構造として捉えます。

 

1. 問題の構造:悪循環の自己強化ループ

サイロ化(蛸壺化)は、以下の要素が絡み合った自己強化型ループ(R)を生み出し、時間とともに問題を深刻化させます。

  • R1:孤立の自己強化
    1. 部門間の協力レベルが下がると、部門は外部の助けを期待できなくなり、目標達成へのプレッシャーが増します。
    2. プレッシャーが増すと、部門は自部門内のリソース(人員、予算、情報)を囲い込み、他部門に提供しなくなります。
    3. リソースの囲い込みは、他部門にとっての協力不足となり、結果として部門間の協力レベルはさらに低下します。この悪循環が繰り返されることで、組織全体の協力レベルはどんどん低下し、サイロ化が深刻になります。

悪魔のサイクル」

 

2. 情報伝達の遅延がもたらす構造的な問題

 

このサイロ化の構造に、情報伝達の問題が加わると、市場対応力が低下する別の悪循環が生まれます。

  • 遅延のシステム的な影響
    • 市場の変化のスピード がアップすると、 部門間の情報伝達の遅れる
    • 部門間の情報伝達の遅れると、共通認識のズレは広がる
    • 共通認識のズレが広がると、 間違った方向での部門最適化で終わり、 市場への対応遅れとなる。
  • 現場で発生した問題や顧客の生の意見が、部門の壁を超え、経営層に届くまでに時間がかかったり、フィルターをかけられ、経営の意思決定が市場の現実から乖離します。

 

3. レバレッジ・ポイント(効果的な介入点)

 

この悪循環を断ち切り、サイロ化を解消するために、システム思考が示す効果的な介入点(レバレッジ・ポイント)は以下の通りです。

 

① メンタルモデルへの介入:目標の再設計

 

サイロ化の根源にあるのは、「自部門の目標達成がすべて」というメンタルモデルです。

  • 行動:部門目標の上位に、複数の部門が協力しないと達成できない「共通の目標」や「全社的な顧客満足度指標」を設定します。
  • 効果:「共通の目標」が設定されると、目標達成へのプレッシャーが「リソース囲い込み」ではなく「協力」に向かうようになり、悪循環(R1)を弱めることができます。

 

② 構造的な介入:情報の流れの強制と改善

 

物理的な構造やプロセスを変えて、情報の流れを改善します。

  • 行動
    • 部門横断的な「情報のハブ役(クロスファンクショナルチーム)」を設置し、情報の流れに「遅延」が生じない仕組みを強制的に導入します。
    • 部門をまたいだジョブローテーションを実施し(蛸壺化からの脱却)、他部門への共感信頼を構築します。
  • 効果:部門間の協力レベルを直接的に高めることで、悪循環の根幹に働きかけ、サイロ化の構造そのものを変えます。

このようにシステム思考で分析することで、表面的な「会議を増やせばいい」といった対応ではなく、構造そのものを変えるための本質的な打ち手に気づき、改革行動を起こす。 心で悟り、技(わざ)を修得、行動、体を使いまくる。Just Do It right Now!!